ままごと「わが星」

半年ぶりぐらいの更新。

今日は久々のアイホール。ままごとの「わが星」です。
昨年11月に大阪で観た「あゆみ」が素晴らしく、
また、柴幸男がこの作品で「岸田國士戯曲賞」を受賞したということもあり。

以前友人と飲んでたときに、震災以後の壊れた日本を
演劇界では誰がどのように表現してくるか、ということが話題になりました。
そこで気になったのがこの「わが星」というタイトル。

ただ、この作品は震災前に作られたもので今回は再演なのだけど
私は興味があった。

でも、結論からいうとあまりそれは関係なかった気がします。

ごく平凡な団地住まいの家族の数十年を切りとった物語。
家族のメンバーや登場人物は、太陽系の惑星になぞらえられてて。
主人公のちいちゃんは地球、お姉ちゃんは太陽、
友達のつきちゃんは月。
ちいちゃんがぐるぐる回れば時は進み、
成長とともに月ちゃんとは少しずつ離れていく。
ちいちゃんと月ちゃんの「ままごと」は、
なんだか涙が出そうになる。

舞台上にはごくごくありふれた口語だけ。
BGMには時報がなり続け、
役者の声は自然とラップのリズムをきざむ。
役柄が一瞬にして、別の人に乗り移る違和感のなさ。

計算しつくされた演出法と体の切れ。

文句なしに、かっこいいのです。

でも、私は「あゆみ」の方が好きだった。
なにか、もう一つ、すっきりしないせつなさが残りました。

観終わってから、パンフレットに挟まれていた
柴さんのコメントを読みました。

「数か月では何も変わらないのだと無力感を覚えつつ。
(中略)変わらない、変えがたい大きな流れの中で
必死に変えようとする小さな力もこの作品は描いている。
今はそう思いたい」

表現者として葛藤があったんだろうな、と思わせる内容でした。

この人の世界のとらえ方は説得力があるし、見る人を救う力を持っていると
私は勝手に考えています。


だけどそう簡単には、この作品が「今」は消化しきれない。

きれいごとじゃないけど、彼が描く希望を渇望している。
希望が持てる作品を、今度は観たい。