鹿殺し、満月動物園そして五反田団「びんぼう君」

金曜日に劇団鹿殺し「青春漂流記」、土曜日に満月動物園「ツキノウタ」、そして今日は五反田団「びんぼう君」をみました。

鹿殺しは…
高田聖子が「高田聖子キャラ大爆発」だったから、確実に勢いあって、
おもしろかったけど、「涙ダ――ッ」的な瞬間はなかったなあ。
彼らのキラキラ感とカオス感がすごく好きで、で、ときに切なくてしんどくてええ芝居みたなあっていう感覚を求めてたんだけど、今回はそれが少し足りなかったかも。ハッピーエンドとはいいがたい、アラサーのメランコリアを見せつけられて、私的に落ち込んだ(笑)。まあ、見る側のコンディションにもよりますね。

満月動物園。
なにより、シアトリカル應天院という劇場に腰を抜かしました。ここで、戒田さんの「生死」をモチーフにした芝居をやるか、と。客席へ通じる2階へ上がる階段の横壁がガラス張りで、本物のお墓がアートのようにこちらを向いてずらりと並んでいるのです。
ま、本物のお寺だから当たり前なんですけど…、シュールでした。
女優さんが全員何かと戦う目をしていて、圧倒的だった。
役者が自分と向き合う芝居をしているかとか、集中力が手にとるようにわかる、恐ろしい劇団だと改めて思いました。

そして五反田団「びんぼう君」!
まず、チラシの前田司郎さん直筆の脱力系文字と脱力系文章。
「たとえ貧しくとも、大切な人がいて、楽しむ工夫をして、健康に暮らせれば、そこそこ幸せなのではないか?」という思いを金持の立場から描いた作品です。僕の家はわりかし裕福だったので。・・・

「わりかし裕福」と、バッサリ言える人は少ない。
その言葉がインプットされた脳で、「お父ちゃん」の巨大にあいた靴下の穴や段ボールで作られたありえない机が飛び込んでくると、もう笑うしかない。

貧乏を笑う、という背徳感を楽しむ。
言葉にするとなんだかひねくれた感じだが、笑えるもんは笑えるんだからストレートにおもしろいんだと思う。仕方ない。

ものすごい守っていた(ように見えた)アクティングエリアが、盛り上がってくると突然ルールが取っ払われたり、男女のわかりあえなさの真髄を小学生女子の「ままごと」から教えられたり。

だらだらした芝居に見えて、実はものすんごく作りこまれているのが、文句なしに「かっこいい」んだ。

この芝居…マジで貧乏な人はどんな風に楽しんだのか。そればっかりは、私も「わりかし裕福」な観客なのでわからない。

というより、2500円払って下鴨東本町まで来れる人は、びんぼう君に比べたら全員「わりかし裕福」だよな。