田舎がほのぼのしてると思ったら大間違いだ!「臭う女〜におうひと〜」

さて、本日は劇団野の上「臭う女〜におうひと〜」です。

一人芝居フェスティバルで知り合った山田百次さん。青森の弘前劇場を経て、自身の劇団を立ち上げたのが2009年。そして、すでに公演3回やってるという。

今夏も一人芝居で全国を縦断するすき間に、アゴラで本公演を1本うつ、という意味のわからないスケジュールをニコニコしながらやってのける、愛すべきお兄さん。

開場後に半分衣装で舞台上から「いらっしゃいませ〜」と言ったかと思えば、おもむろに舞台装置の砂に水をやったり、あ、役に入ったのかな?と思ったら、「かばん、受付で預かりましょうか?」と、また最前列の客に声をかけたり。狙ってるんだか狙ってないんだかの、この独特の可笑しさって誰でも瞬殺されると思う。

でも、おっとりで片づけられないのが、この人の怖いところ。

だって、津軽弁にまさかの英語字幕。
どっちもほとんどわからんよわたしゃ。いくら京都がアカデミックでも。
狂ってるという言葉じゃ片づけられない。

ニンニク農家のおばさん5人がニンニクの皮をむく。(とにかく劇場がニンニク臭い!!)
あそこの嫁と舅があやしいとか、夫のチンポの大きさがどうとか下世話な話にはじまり、ニートの孫とか結婚詐欺とか中国人妻とか介護の話とかサラ金地獄とか、まあほんとに

「田舎がほのぼのしてると思ったら大間違いだ!」

と、驚愕してしまうお話。

けど、それがあまりに津軽の日常で、手に持ってるのがなにせニンニクだから、やっぱりどこかのん気で私にとってはファンタジー。そして黒幕には英字。シュールでした。かなり。そして、ぐっときました。かなり。

人と寄り沿うこと。
シンプルだけど、ぬくもりが生々しい舞台でした。

めったに出会えない種類の「好き」です。

気がついたら、中盤以降はほとんど英語を見ずに笑ったりしんとしたりする自分がいました。

よく考えたら、昨日の中屋敷さんと山田さんは同じ青森出身で、かたやデフォルメされた口語を選び、かたや地元の若者でも聞き取れないほどのネイティブ方言を選び、中屋敷さんはロジックで攻め、山田さんは感性で攻めるという、まったく真逆の道を進みながらも、同じく観客の心をゆさぶるその偶然はなんだろう、と一人脳内県民ショーをしていたのでした。

あえて206号系統のバスで下鴨東本町から京都駅までゆっくり帰りながら。