近代能楽集「弱法師」

人は感動するとほんとに立ちたくなるものなのですね。立ち上がって夢中で拍手しました。
三島由紀夫作・蜷川幸雄演出の「近代能楽集」から「卒塔婆小町」と「弱法師」をみにいきました。

藤原竜也、という俳優は私にとってとても思い入れの深い人です。彼のデビューは「身毒丸」。
当時高校3年。生のニナガワ演劇をみたい、と思った演劇少女のわたしは、ひょんなことから、パンクファッションに身をつつみ、派手なことで有名で特に親しくもなかった他のクラスの女の子とその「身毒丸」をみにいくことになりました。

デビュー前の藤原竜也はただのサッカー少年で、そのオーディションに合格したらポパイかなんかの表紙になれるってので、むしろ表紙になりたかったから応募してみたってくらいの子だったそうです。

だけどその華やかさ、繊細さ、セクシーさ、迫力、舞台度胸、透んだ声!天才とはまさに彼のことをいうのだなあと。最前列で、見終わってしばらく二人とも口をきけなかったのを覚えています。それをきっかけに彼女とは仲良くなり、二人でずっとたっちゃんたっちゃんと盛り上がってました。
しばらくして彼女は病気で入院。入院中に、ファンのネットワークから彼女のことを知ったたっちゃん本人から直筆の励ましのメッセージも届いて大喜び。でも、高校卒業を前に他界してしまいました。

あれから7年。たっちゃんの芝居でいくつか気になるお芝居はあったものの、なんとなく足が向かず。
今日なんか突然思い立って会社を早々と抜け出してみにいくことにきめました。

やっぱりたっちゃんはものすごく成長していて、もう少年ではなくなっていて、男の俳優としてそこにいました。身体そのものが音楽であり、色彩である。ってほめすぎかもしれないけど、ニナガワさんが一目ぼれした気持ちがすごくわかる。
原石であった彼は、ますます磨きがかかって、でもまだまだすごい高いダイヤモンドになる可能性がある役者となってました。

彼女がいたらどんなに興奮して二人でこの帰り道を歩いただろうなあ、と思うと彼女の不在について、ひさびさに涙がぼろぼろでてきて、おセンチな夏の夜です。でも、みにいってよかった。