演じる高校生

京都造形芸大のホール春秋座に「演じる高校生」を観に行く。
数年前から春秋座では、高校演劇コンクール近畿大会の優秀校上位2校を招待し、私のような(マニアの)一般客に向け有料で公開するという珍しい企画をやっている。ファンだけどさすがにブロック大会から見るほどヒマではない私にとってはありがたいイベント。高校演劇の顧問をしている友人にも誘われたこともあり、現役顧問の先生方数人とご一緒させていただく。

高校演劇の「未熟さ」を侮ってはいけない。
その「未熟さ」は、そもそも熟することが本当に正しいのかという根本的な問いを投げかけてくる。
逆に、「自分はこのままでいいのか」と焦らされるほど成熟しきった表現を目の当たりにすることもあって、背筋が震える。

このぐらぐら感がたまらないから高校演劇ウォッチャーはやめられない。
さて今日の2校。

兵庫県立西宮今津高校 「太陽の箱」
神格化されている自分と、人間である自分の存在のギャップに苦悩する南北朝時代天皇の話。クライマックスでその姿は昭和天皇になぞらえられ、玉音放送が鳴り響く中「天皇陛下万歳!」の言葉がこだまする。白塗り&全編通して流れるオペラの妖しさがすさまじく、高校演劇とは思えぬほど完成度の高い異色の作品。神聖なる三種の神器の納められている器が、実は空っぽだったエピソードに加え、小道具や豪華な衣装がすべてもろい和紙でつくりあげられているという皮肉なセンスに恐れ入る。

追手門学院大手前高校 「あげとーふ」
うって変わって関西弁でまくしたてる男5人の「卒業旅行」青春コメディ。タイトルの「あげとーふ」を「I get off」と勘違いされてグランドキャニオン付近で車をおろされてしまったところから話ははじまる。メインのディズニーランドへ急ごうとする者、本当はDFSに行きたい者、どうしてもグランドキャニオンに行きたかった者と、てんでバラバラな彼らが、途中下車によって得る◯◯。get offすることってたまには必要かもなーと素直に思えてしまう。さすが大阪城の真ん前の高校というだけあって、同じ関西といえど京都で育った者にとっては「お、大阪の子や・・・」とたじろいでしまうほどパワフルな作品。

甲乙つけがたいが、全国大会には「あげとーふ」が出場することが決まっている。「太陽の箱」が最終的にNHKで放映可能かどうかは不明だが、この芸術作品がほんの少数の人間だけへの公開で終わるというのが残念でならない。

こういったコンクールは「残り福」があたりまえだが(笑)やっぱ残る前の福もきちんと確認しておかなければいかんなあ。
それを言うなら「逃した魚は大きい」、か。

夏の全国大会の会場は今年は島根。
もちろん選抜時にメインだった3年は卒業するので、キャストを一部変更してのぞまねばならない学校もある。それでも代表に届かなかった高校の嫉妬を胸に、がんばってほしい。