ホテル・ルワンダ

映画好きの上司が、金曜の夜にマグロをつつきながらふと土日にみようと思っているその映画のタイトルを口にするまでわたしはまったくその存在を意識していなかった。

「大量虐殺」と聞いて、つらそうな映画だなあ。それよりわたしゃまだSAYURIもMr.&Mrs.スミスも見逃したなあ。もうどこもやってないよなーとか思いながら、携帯で「今日の映画」のサイトをみていた。

一人で行くなら、京都シネマみなみ会館だなーとスクロールしていると「ホテルルワンダ」。時間もちょうどよかった。「うーーーーむ」

みなみ会館があんなに混んでいるのをはじめてみた。ほぼ満席で、前から二列目しか残ってなかった。ちょっと様子が違うぞと感じながらもおそるおそるチョコメロンパンとココアをを広げた。く、首が・・・と思いながら大迫力のスクリーンにのけぞった。隣のおっさんは、シーン1くらいから大いびきをかきはじめてちょっとむかついた。

映画は、残酷な出来事や、真実を次々とリアルに描くことに成功していた。一人の勇気ある男とその妻や子との愛の物語だった。

民族の問題といわれても、わたしにはピンとこない。ただ、主人公はフツ族、妻はツチ族というこの紛争の根本的な原因をつくっている血の違いを背負っていた。

単なる「ヒーローもの」ではなかった。男ははじめ、妻と子供を守ろうとしただけだ。「ファミリー」という言葉の発音が幾度か印象深く耳に残った。彼は結果的にツチ族をはじめ多くの難民を救うことになるのだが、彼の発する愛情の誠実な演技をわたしはいいなあと評価した。

虐殺を逃れるために妻が子供とともにバスルームでシャワーヘッドを銃のように突き出して、息をひそめていたところを、夫が発見し、緊張が解けた次の瞬間に笑いが起こったシーンも忘れられない。

結局隣のおっさんもわたしも最後は画面から目を離せず、ちょっと鼻をすすっていた。

映画をみ終わって、やっぱりわたしには知らないことがたくさんある。

と、うちのめされた気分で東寺駅まで歩いた。

この映画を見る前に、先日私が演じた人物のモデルとなった井筒さん本人から直接お礼の電話がかかってきた。

R&Bの流れる美容院の中で、わたしはその電話を受け取った。そして、帰ってから母が阪神百貨店で買ってきたという新鮮なホタテ料理を食べた。テレビでは長浜の事件。ヒロシの黒豚紀行。

プロパガンダまみれの世界から逃れて扉を閉める。

部屋でひとりになって、考える。

今日、わたしは井筒さんから「ありがとうございます」と言われた。

その言葉の重さをかみ締める。

それでもわたしには知らないことが、まだまだたくさんあるのだろう。

ホテル・ルワンダは、日本で公開される予定のなかった映画で、それに気づいた人々の署名活動によってようやく公開にこぎつけたのだそうな。そーゆーことに反応もしなくなったら世界は終わるんだろうな。